638人が本棚に入れています
本棚に追加
「梓さ~ん♪お待たせしましたぁ♪」
「ごめんなさいね、忙しいのに。さて、まずは、お買い物ね。」
「…あのう、お買い物って?」
「そりゃあもう、この季節は、愛しい殿方のために、心を込めたプレゼントを、探さなきゃ。
昴さん、谷口君に、何かしら用意してるの?」
「まだ…全然。」
「なら、決めちゃいましょう、今日。」
女3人よれば、かしましいとはよく言ったものだ。
あいだこうだと言いながら、あちらの店、こちらの店と、覗いては、あれこれ買っていく。
「ちょっと休憩しましょうか…おばさんには、きついわ。
…千秋さん、ほら、あすこ。前に入ったお店。あすこで、休憩しましょう。」
「はい。あたしも、ちょっと疲れました…。
昴ちゃん、和菓子好き?」
「あんこたっぷりは、かなわないけど…嫌いじゃないです。」
梓と千秋が、昴を連れていったのは、今さっきいた表通りから、路地を抜けきる手前のところにあった。
甘味処・あまみ
と、綺麗な若葉色の暖簾に白抜きで、書かれていた。
「うわぁ、美味しそうな和スイーツ!これなら、いくらでもOKですよ!千秋さん。」
梓は、抹茶パフェ。千秋と昴は、皿に載せて貰うスイーツを、違う物にして、抹茶ラテのセットを頼んだ。
お互いの頼んだスイーツを、突き合ながら、きゃあきゃあ、言っている姿は、仲のよい姉妹のようだ。
梓は、もし、子供がいたら、いつでも、こんな風な、幸せな気持ちで、いられるのにと、無い物ねだりをする自分が、切なかった…。
「…梓さん?」
「ああ、ごめんなさい。…ちょっと、考えごとしてたの、あなたたちが、私の本当の娘だったらなぁ…なんてね。」
最初のコメントを投稿しよう!