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「…そっとよ、そーっと。ばれちゃうからね。」
「郁美ちゃん…本当にいいのかな…勝手に入っちゃって…。」
「大丈夫、大丈夫。…速水さん、こういうのは、笑って許してくれる人だから。」
そーっと、扉を開けて、一気に、ワッと、驚かそうとしていたのだけれど…。
まさか、扉が、内側から開くなんて思ってなかったので、
「きゃっ!」
「わっ!」
驚いて、声をあげてしまったのは、二人の方だった。
一斉に、4人分の視線が、突き刺さる。
「早苗?!何やってんだよ?」
「郁美…家で待ってんじゃなかったの?」
「あはっ。…その…なによ…そう!いつも、お世話になってる速水さんに、お礼しようと…。ね、郁美ちゃん?」
「…そ、そうよ。ね、早苗ちゃん。」
「嘘くせぇ…。」
「二人とも、きょどってるよ。」
亀山と和樹の白い目に、固まる二人…。
「なんでも、いいじゃない。はい、入って、入って。
中で、適当にくつろいでて。お茶の用意して来るから待っててね。」
千秋に、言われて、怖ず怖ずと、中に入る。
速水の側に行くと、郁美が
「あの、速水さん、いつもお世話になってるので、お礼しよう思って。
早苗ちゃんと、二人で、作ったんです。甘いの好きですよね?確か。」
「…甘ったる過ぎるのは、勘弁だけどな。」
「これ、貰ってください。亀山君のこと…これからも、よろしくお願いします。」
真っ赤になりながら、頭を下げる早苗に、亀山の方が、恐縮してしまうし、照れ臭い。
速水の顔をちらっと見ると、ニッっと、笑う。
「…任せとけ、悪いようにはしないって。
この坊主どもは、大事な内の戦力だからな。
有り難く貰っとくよ、そいつは。」
郁美も早苗も、ホッとしたらしく、緊張が解ける。
「…ところで、お嬢さん方、君らの彼氏君達の目は、訴えてるよ。自分のは、ないのかっ?てね。」
「…ごめん、和樹。後回しになっちゃって。
はい、和樹の好きなオレンジピール使って、チョコ作ってみたの。食べてね。」
「本当に?ありがとう。」
「…よ、洋祐。これ、甘すぎないように、気をつけて作ったから。」
「…今、名前で呼び捨て!ヤッタ~ァ!」
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