春を待つ季節

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20年、30年…と書き続けていても、日の目をみない、作家は、山ほどいる。 そんな中で、たがだか5年ほどの千秋が、これだけ注目され、本が売れたのは、ラッキーとしか、いいようがない。 初版予定の10万は、予約だけで、軽く越えてしまったので、発売前に、もう5万増刷した。 予約が、伸びたので、更に5万…後は、発売後の売れ行き次第で、いつでも、重版できるように、スタンバイはしておいた。 サイン会も、好評で、整理券配布時、予定数の倍以上の人数が、並んだので、その人達のために、日数を急遽、増やした。 最初は、サイン会なんて、したくなさそうだった千秋も、 「こんなにも、みんなが、応援してくれてるんだから、応えなくちゃ!」 と、気合いを入れてくれたし、本当に、ホッとした…。 俺の目の前で、千秋は、小さな可憐な花から、大輪の華麗な花に変わろうとしていた…。 それは、弥生。…3月の半ばを、過ぎた頃のことだった。
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