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「千秋、帰ってるのか?」
返事もせず、ぼぅ~と、座っている千秋に、気付いて、速水が、慌てて、側に来て、覗き込んでくる。
「…千秋?…具合悪いのか?」
小さく首をふった後、じっと、速水を見つめる。
「…彰…あのね…。」
「…何?」
「…あのね…あたし…。」
早く言いたいのに、言葉が上手く出てこない…。
速水は、千秋が、何か、自分に伝えたいことが、あるのだと気付き、少し待ってやる…。
「…あのね。彰。
あたしのお腹の中にね…あたし達の赤ちゃんがいるの…。
まだ、すごく小さいけど…生きてるんだよ、ここに。」
「…本当に?…本当にか!千秋!」
「前に、約束したじゃない…。わかったら、一番最初に、彰に教えるって。」
「千秋!お前!最高!!」
飛び切りの笑顔で、あたしを、ギュッと抱きしめた後、ごめんって、慌てて、力を緩めると、そっと抱きしめ直してくれた。
「よかったな、千秋。お前、俺の赤ちゃん産みたいって、言ってたもんな。」
「うん。今ね、4ヶ月なんだって。…産まれるのは、秋、9月の終わりくらいかな。」
「…仕事、無理のない程度に、抑えなくちゃな。
こっちも、軌道にのってきてるし、俺の腕の見せ所だな。」
「彰、あたし、産んでもいいよね?」
「当たり前だろう!何言ってんだよ!
…待ってたんじゃないか、この子が、俺達の元に来ることを、ずっと。」
そう言って、速水は、千秋を、もう一度、優しく抱きしめた。
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