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「千秋さん、お加減いかがですか?」
突然、郁美の声が聞こえて、千秋は、びっくりした。
「…郁美ちゃん?」
「速水さんに、鍵借りてきました。勝手に、入って、ごめんなさい。」
「彰が、鍵、渡したんだから、構わないわよ。
すぐ、お茶煎れるわね。」
「千秋さん!気を使わないでください!
お願いしますから、座っててください!
私、自分でしますから。」
「…ごめんね。」
千秋さん、顔色悪いし、すごく気分悪そう…。
前に来た時の記憶を頼りに、お茶を煎れる。
「千秋さん、お茶ここに、置きますね。
…えっと、速水さんに聞いたんですけど、おめでとうございます。」
「ありがとう、郁美ちゃん…。
ああ…そんな心配そうな顔しないで、大丈夫だから。
ちょっと気分悪いだけなんだから…。
それより、スーツ似合ってるよ。今日、入学式だったのかな?」
「はい。」
「…よかったね。元気になれて。和樹君も、喜んでるでしょ。」
「和樹は、もちろんなんですけど…パパが、テンション上がっちゃって。
パパったら、和樹に迷惑だって、言ってるのに、一緒に、入学式に行こうって、誘っちゃって…。
和樹が、断れないのわかってて、誘うんですもの。」
「お父様、郁美ちゃんが、可愛いのよ…。
郁美ちゃんが、羨ましい…あたしの父は、入学式にも卒業式にも、何も、言って来なかったから…。
この子には、そんな寂しい思い、絶対させないつもりなの…。
彰と、二人で、一杯、愛情注いで育てるんだ。」
そう言って、千秋は、お腹をそっと撫でた。
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