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「…速水さん、これ、この場所に置いといていいんですか?」
「悪いな、書庫の入口入って、左手の棚の空いてる所に、入れといて。…鍵!」
ガシャ
和樹の手の中に、鍵の束が、落ちる。
「…了解。」
書庫は、定期的に、速水と和樹で片付けをしているので、どこに何があるか、どの棚が空いてるか、頭に入っている。
言われた場所に、物を収めると、また、鍵を掛ける。
「…はい、終わりました。もう、仕事、残ってませんか?」
鍵を返しながら、和樹は、聞いてみた。
「ご苦労さん。後は、この書類作ったらおしまいだから、ゆっくりしといてくれ…。」
そう言われた和樹は、ふたつ珈琲を入れて、速水の隣に、座った。
「はい、速水さんの分。
…あのさ、教えて欲しいこと、あるんだ。
千秋さんから、赤ちゃんが、出来たって聞いた時、どんな感じだった?
…なんていうか…将来の参考のために、聞いとこうかな…なんて…。」
「…気が早いな。でも、ねぇか…。やるこたぁ、やってる訳だし…。
真剣に、結婚まで、考えてるんなら、身近に、いい見本かどうかは、わかんねぇが、聞ける相手がいるんだからな…。
聞きたいわな。お前としちゃあ。」
「聞きたい…。いろんなこと、教えてもらいたい…。
僕の父さんにも、郁美のお父さんにも、話せないこと、聞きたいこと、速水さんになら、話せるし、聞ける…。」
「…それは、俺が、お前にとって、一番、扱い易い存在だからだ。距離感が、ほどほどだからな。」
「扱い易いなんて…思ってませんよ、僕。」
「言い方が、悪かったな。
親兄弟は、存在が近すぎて、聞けねぇんだよ、色恋沙汰の話なんてな…。
その点、俺は、他人だし、お前より、一回り上だからな…ちょいと経験豊富なアニキって感じだろ?」
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