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「…うん、そうかも。」
「ホントに素直だな、和樹は…。
俺のまわりには、腹に一物あるやつ多いから、俺自身素直になれねぇんだよな。
だけどな…お前に対しては、素の俺を晒せる…。
晒してもいいって、思えるのは、今のところ、和樹、お前だけだな…。
「…谷口さんは?親友なんでしょ。」
「あいつは、心底いい奴だよ…だから、傷付けたくないんだ。
真正面から、俺にぶつかったら、間違いなく、あいつの心が折れちまう…。」
「ええ~っ…谷口さんには、気を使って、僕には、使わないんですか?
僕だって、傷付くかもしれないじゃないですか…。」
「…お前はないな。」
「うわっ!酷っ!」
「はははは…。お互い、裏の裏まで、知ってるだろ。
俺にとって、特別なんだよ…お前はな。
さて、さっきの質問に、答えてやろうな。
千秋に、話聞いた時、俺は、素直に嬉しかったよ。
考えてもみろよ、俺も、千秋も、あんまり家族には、恵まれてねぇんだぞ…。
幸福になりたい、そのために幸福な結婚して、幸福な家庭を作りたいって、心の底から、どっちも思ってたんだ。
だから、赤ちゃん出来たって聞いた途端、正直、舞い上がっちまったよ。
早く子供が欲しいって、二人とも、思ってたんだからな。」
そう言って、笑ってる速水さんは、幸福そうで、自然とつられて、僕も笑ってしまう。
「…でもさ、子供産まれたら、また、後継ぎがどうのこうのって、ややこしいことになるんじゃないの?」
「あほっ!…なんのために、今、俺が、しんどい思いしてると思ってんだよ。
後に引きずらないように、いつか、産まれてくる子供が、俺みたいにならないように、骨折ってんだよ。
俺の心配より、和樹、お前、自分の心配しろよ。
郁美とのことやら、卒業後の就職のことやら、あるだろう、一杯。」
自分に振られた話を、どうしたものかと困惑する和樹を、悪戯っ子の顔で見ている速水が、そこにいた。
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