息吹

9/19
前へ
/173ページ
次へ
「…直に、出来上がるから、ちょっとだけ、待ってろよ。」 相変わらず、気分のすぐれない千秋のために、速水は、できるだけ口当たりのいいものをと、今日は、コンソメ仕立ての野菜スープを作っていた。 「…迷惑掛けて、ごめんなさい。」 「俺は、迷惑だなんて、これっぽっちも、思ってないぞ。…むしろ、喜びだな。 千秋は、辛いかもしれないけど、千秋の中で、赤ちゃんが、育ってるって、サインなんだし、俺は、代わってやれないからな。 出来ることやってるだけだから…。それに…」 「それに?」 「…あんまり、普段と変わらない気がするんだけどなぁ…。」 「ああ!あたしが、家事、全然やってないみたいな口ぶりじゃない! …酷いなぁ…そんな風に、思ってたんだ。ショックだ…。」 ちょっと大袈裟に、怒ってから、落ち込む姿に、慌てて、フォローをいれる。 「ごめん、ごめん…全然、思ってないから!」 「本当に?嘘じゃない?」 ウンウンと、頷く速水を、確認してから、 「仕方ないから、許してあげる。」 千秋が、勝ったという顔をするので、速水は、苦笑いするしかない。 「…はい、スープできたよ。具材に、お米ちょっと入れてみた。 ごはんだけだと、今、食べれないだろう?」 「ありがとう。そういう気配りの出来るところ、いつも感心しちゃう。 いただきます…。 うん。すごく食べやすい。…それに、美味しい。」 「しっかり食えよ。千秋。今日は、区役所行って、その後、病院も、行かなくちゃならないだろう。」 「…うん。頑張って、食べるね。」 千秋のスプーンが、口に運ばれていくのを、確認してから、速水は、自分の朝食に手をつけた…。
/173ページ

最初のコメントを投稿しよう!

638人が本棚に入れています
本棚に追加