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「…直に、出来上がるから、ちょっとだけ、待ってろよ。」
相変わらず、気分のすぐれない千秋のために、速水は、できるだけ口当たりのいいものをと、今日は、コンソメ仕立ての野菜スープを作っていた。
「…迷惑掛けて、ごめんなさい。」
「俺は、迷惑だなんて、これっぽっちも、思ってないぞ。…むしろ、喜びだな。
千秋は、辛いかもしれないけど、千秋の中で、赤ちゃんが、育ってるって、サインなんだし、俺は、代わってやれないからな。
出来ることやってるだけだから…。それに…」
「それに?」
「…あんまり、普段と変わらない気がするんだけどなぁ…。」
「ああ!あたしが、家事、全然やってないみたいな口ぶりじゃない!
…酷いなぁ…そんな風に、思ってたんだ。ショックだ…。」
ちょっと大袈裟に、怒ってから、落ち込む姿に、慌てて、フォローをいれる。
「ごめん、ごめん…全然、思ってないから!」
「本当に?嘘じゃない?」
ウンウンと、頷く速水を、確認してから、
「仕方ないから、許してあげる。」
千秋が、勝ったという顔をするので、速水は、苦笑いするしかない。
「…はい、スープできたよ。具材に、お米ちょっと入れてみた。
ごはんだけだと、今、食べれないだろう?」
「ありがとう。そういう気配りの出来るところ、いつも感心しちゃう。
いただきます…。
うん。すごく食べやすい。…それに、美味しい。」
「しっかり食えよ。千秋。今日は、区役所行って、その後、病院も、行かなくちゃならないだろう。」
「…うん。頑張って、食べるね。」
千秋のスプーンが、口に運ばれていくのを、確認してから、速水は、自分の朝食に手をつけた…。
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