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"ストーカー"の単語を口にした瞬間脳天に衝撃がきた。
「いっ…!」
俺は頭を押さえて呻いた。身体を縮め、涙目で男を見上げる。
男は涼しい顔をして俺を見下ろす。その手にはあの分厚い本。
そうか、あの痛みは本の角だな。あいつ、本の角がどれだけ凶器となるかわかってない。
「おい、なにすんだよ!」
「私はおいという名なではありません。」
「じゃあ何だよ?」
「そうですね…、ラルフェとでも呼んでください。」
ラルフェと名乗る男は考えこんで言った。
――絶対本名じゃねぇな。まぁ、俺には関係ないがな。
「で、俺は何でここにいんだ?ってか、ここは何処だ?」
俺はラルフェを睨みつけながら言った。
ラルフェはフンと鼻を鳴らし渋々答える。
「ここは常世でも黄泉でもない、狭間の世界。あなたは人生に不満を感じ自殺をしました。しかし、それのせいで常世に忘れ物をしました。」
ラルフェは子供に言い聞かすように言った。
「何だよ忘れ物って。」
「それは、あなたが自分で見つけなければ意味がありません。」
「じゃあ、どんな物なんだ?」
ラルフェは「そうですね」と言い、顎に手を当てて考え込む。イケメンが考え込む姿は綺麗だなと思った。
「生きるために必要なものとだけいいますか。」
そう言い、ラルフェは厚い本を再び開いた。
そして俺の前に開いたページを出す。
――なになに。生章第126章第7項常世に人生に宝を忘れた者は黄泉に送るべからず。
「なんだこれ…?」
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