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「さて、千尋」
「何だよ」
「俺、傘ないんだけど」
悪びれもなく、言う。
「入れてもらっていい?」
ああ。
もう。
「入りゃあいいだろ」
仕方ない。
だって、傘1本になっちゃったし。
と、頭の中で納得させる。
「さぁ、何か食って帰るか」
裕二は俺の傘に入りながら、さり気無く柄を持つ。
優しさが憎らしい。
「もちろん、お前のおごりで」
「ラーメンな」
えーっと口では不満を漏らしながら、裕二は嬉しそうに微笑む。
しとしと。
ピシャピシャ。
濡れないように、画材を持ち直し。
二人で体を小さくして、歩く。
恥ずかしいけど、仕方ない。
だって。
傘は1本しかないんだもの。
結局は、裕二の思うまま。
後で、ちゃんとお礼言うか。
少し濡れた、制服の裾を見ながら溜息をついた。
END
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