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雨は嫌いじゃない。
自分に害がなければ、だけど。
(走るしかないか)
諦めの溜息をつき、決意する。
一応、画材にはビニールかけてもらってるし。
ここから駅までもそう遠くはない。
よし。
と心の中で、掛け声を言って走り出そうとした瞬間。
「あっ、いたいた」
不意に、後ろから声がした。
「裕二?」
ビックリして振り返る。
まさか、こんなところで会うなんて。
「なんでいるの」
眉をしかめて言ったのは、それが嫌だったからじゃなくて驚いたから。
ビックリしすぎて、無愛想になってしまっている。
「お前、帰りここに寄るって言っただろ?」
確かに、言った。
「そんで雨降りそうなのに、お前は傘を持ってなかった」
「うん」
いつも立ち寄る少し大きな店の前。
傘をさし、
傘をとじ、
雨は降り続ける。
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