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「で、それに気付いた優しい裕二君は、千尋ちゃんを追いかけたわけだよ」
憎らしく口元を上げ、優しく目じりを垂らす。
「でも、店内にいなくて、良かった」
得意げな顔で笑う。
この店に、もしかしたら俺がいないという選択肢はなかったのだろうか。
ああは言ったけど、寄らずに帰ったとか。
買い物を済ませて帰ったとか。
違う店に行ったとか。
「俺がいねーとか思わなかったの?」
「えー?でも、いるじゃん」
そうだけど。
という言葉を飲み込む。
「電話すりゃいいのに」
照れてるんだってのはばれないように、少し口を尖らせてみる。
「はぁ?したって」
その答えに、携帯を確認してみると
確かに裕二から着信があった。
「それに、俺とお前の付き合いだぞ。お前が買い物にどれくらいかかるかなんてお見通しだっつの」
そこまで得意げに言われてしまうと、なんだか余計恥ずかしくて、もう裕二の顔は見れなかった。
「さて」と裕二。
もう一つ、手に持っていたビニール傘を差し出し、首を傾げる。
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