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そんな状態で家に帰ってきた。僕の家はごく普通の一軒家と言ったところだ。
玄関のドアを開ける。すると、たまたま、玄関の前を通った母がいた。
「あ、龍之介おかえり。」
僕の名前は古屋 龍之介(ふるや りゅうのすけ)と言う。
笑えるだろ、こんな奴が龍之介なんて。
だから“落龍(おりゅう)”なんて古くさいあだ名で呼ばれたりする。見た目は格好悪いとも言えないが何とも不名誉な名前だ。
「びちょ濡れじゃない。傘持って行きなさいって言ったのに。」
一瞬消えたかと思うと次には手にタオルを持っていた。何とも、優しい母だ。そして、美しい。
栗色に染めてパーマが少しかかった髪型がよく似合う。
別にマザコンと言う訳ではない。
僕は体を拭き終え、靴を脱いでいる時であった。
「なんかあったの?いつもと違うわよ。」
僕の靴を脱がす手は止まる。
「気のせいじゃない?雨降ってたし…」
「あら、そう。」
母はそういって台所へと向かう。
何となくだが僕は全てを見透かされたような気分になる。
僕は玄関に上がり、そのまま二階にある自分の部屋へと向かう。
拭けるところは拭いたが、まだ服が濡れていて気持ち悪い。
部屋に入ると、顔を横にして目の前にあるベッドに体を伏せた。
濡れた服が体に密着して余計に気持ち悪い。でも、そんな気持ちは寂しさが打ち消してくれた。
どうしたら、いいだろう。明日も学校がある。
明日は誰も話し掛けてくれないだろうな。独りぼっちの毎日が始まるのか。
独り何も話し掛けられない自分を想像してみた。すると、何かが込み上げてきた。
さっきの感情よりずっと強いものが。
次には目から頬にかけて輝く雫がゆっくりと走りはじめた。そして、ベッドに雫が滲む。次第に雫の量が増えていき、水溜まりになっていた。
泣いちゃうとなんか楽だな。ダサいけど。涼に言われた通りに誰かに話し掛けてみようかな。
少し前向きになってみる。この行為も心がちょっと楽になったりする。
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