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「―――真田の旦那、右目の旦那からの文だ。」
「……?片倉殿から、だと?何故だ。」
「さぁてね。…あの旦那の事だから簡素な要件で文を送ることはまず無いと思うけど」
「………解った、……待て佐助。お館様にはこの」
「悪いけど伝えてないよ。…俺様の勘だと…どうも嫌な予感がするんだよねその文。ロクな内容じゃないと思ってね。まずはアンタに渡したよ」
「………解った」
甲斐―――武田
真田主従宛てに、政宗の腹心である片倉小十郎の文が届いたのは先刻のこと。
現在奥州と甲斐は同盟を結んでおり、戦関係から他愛ない文まで交わすことは珍しくは無かった。
今回もそのような文かと勘ぐっていた幸村は、文を書いた相手と自分の部下の表情に驚きを隠せなかった。
ただ事ではないと察知した幸村は、深呼吸をした後文を開く。
「『甲斐武田は武田信玄殿、真田幸村殿。此度は我が主、伊達政宗に代わり文を送らせて頂く。
単刀直入に述べる。奥州は今混乱の中にある。
――ここ数日から、奥州の村民や伊達軍の部下が不可解な死を遂げることが続いている。時刻は何れも丑の刻。場所は様々だが大凡が人を寄せ付けない僻地での犯行。最大の特徴は―――我が主が使用する刀と同様の傷が、六爪の爪痕が刻まれていること。
無論伊達軍は全員、我が主の犯行では無いと信じている。だが村民は憤りと不満を隠せないのか、我が主への謁見を望む者もいるのが現状。
………断腸の思いだが、此度の事件のご協力を得たい。このままでは奥州の地が血に染まる。それを避ける為に――』」
ぐしゃ
「………へっ?」
佐助が音の発生源を突き止めて首を向けると、……手紙を潰したまま怒りの気配を湛えて仁王立ちする幸村の姿があった。
「……………ぁ…え」
「…おーい、だん「ああぁあありえぬぁあああああ!!!!!」
「政宗殿が部下や村民を手にかけておるだと!?有り得ぬわぁああ!佐助ぇ!即っ刻奥州に行き、片倉殿のところに急ぐのだ!!!」
「はぁ!?いや訳わからないし、まず文読ませなよぁあああ文を握り潰さない!」
―――しばらく、お待ちください―――
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