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「……なるほどね」
「片倉殿は、政宗殿の所業ではないと申している。それには、この幸村も同意する。…政宗殿がかような愚行を犯す筈が無いと。」
真田幸村と伊達政宗。
川中島の合戦へ向かう道中に出会い、闘い、お互いを好敵手と認め合った唯一無二の存在。
幸村は―――戦の際の背筋が震えるような覇気、闘気、竜が舞うが如くに刀を奮う政宗の姿に見惚れていた。今までどんな女を見ても心から美しいと思えず、色恋にも疎い(と言われた)自分が。
政宗の姿を見て、確かに『美しい』と感じたのだ。
………今回の件が、政宗の所業ではないと言い切れるのは、単に惚れた弱味からの擁護ではない。
惚れた者の内面を知りたいと思うのは至極当然のこと。幸村は政宗と闘い、文を交え、逢瀬で話すことで。
―――奥州の民に崇拝され、誰にでも好かれる政宗の姿を知ったのだ。
民の為、一国一城の主として命懸けで刀を奮う熱き心に。
どんな部下も見殺しにせず、自分を犠牲にしてまで救おうとするその強き精神に。
民に慕われる要因を、確かに幸村はその目に焼き付けたのだ。
………そのような人間が武器も持たない民相手に殺戮の限りを尽くすとは、到底考えられなかった。
「……確かに旦那の言うことは解る。だが、気になるのは――この手紙、竜の旦那の事が一言も触れられてない。」
「それがどうしたというのだ!!」
「民から恨まれてるかもしれないって時に、あの旦那が何もせず閉じこもってるような柄に見える?……自分に関連してることだから、姿を眩ましてるって可能性も―――――っ」
拳が宙を切る。
「何が言いたい!」
「相変わらず接近戦に向かない忍も容赦無いね旦那は。……そう目くじら立てなさんな。」
「佐助は政宗殿のことを信用出来んと申すのか!?」
「何でも信用する緩い精神を持っていたら忍は務まらないんだよ。落ち着きな旦那。――気になるのはそこだけじゃない」
「?」
「もう1つは――各地に差し向けた忍隊の目にまったく留まっていないってこと。」
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