26人が本棚に入れています
本棚に追加
相手の出方を伺うしか無い今、再度不審人物を鋭い目つきで見上げる。
『そう睨むな。……ん?』
――――カサッ
草木を踏みしめる音。
それが何を指しているのかは政宗は嫌でも解った。
…人間がいる。
こんな真夜中に近い時間帯に。
何が用事か、それとも村の見回りか。どちらにしろこの状態をやり過ごしてくれたら良いのだが、生憎今の政宗の状態は誰の目から見ても明らかに特異だった。
そこに居るはずなのに存在感が感じられないような雰囲気を持つ男と2人、しかも政宗は村民からすればまったく手の届かない地位にいる、奥州の長だ。
この時間帯にこんな場所にいることが解ったら、単なるお家騒動の騒ぎじゃ済まないだろう。
しかも、今の政宗は、………単刀直入に言えば、…発情しているようなもの。
この状態を特異と言わずして何と言うのか、言える人間がいるのなら教えを請いたいぐらいだった。
「……っ!くそ……と、りあえず、てめぇの…戯言に付き合ってる暇は………ねぇんだよ!」
『戯言か……どうとでも受け取るがいい。…その身体でどこに行くつもりだ?竜の右目に手込められるつもりか?』
「………!?」
―――何でコイツが小十郎のことを?
「てめぇ……っ!いい加減に………ッ―――――――!」
―――一瞬
――ほんの一瞬だった
『――楽にしてやる。過去から脱却させてやる。だから、私に総てを委ね、その身体を明け渡せ。
奥州の王と呼ばれたその身体。【我が器】にふさわしい。我の魂を納めるに選ばれたこの身体。
存分に味わい尽くしてやろうぞ。』
最初のコメントを投稿しよう!