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「う………あっ…」
――――妖しげに月が照らす地に、若い肢体が二つ。
熱を帯びた唇が、青年を誘う。
まるで操られるように、青年は政宗の身体を一心不乱に貪った。
身分が違い過ぎるその身体に手を触れること等、たかが一村民に出来ることでは無い。
だが――手招きをされるように囁かれた言葉に、青年の理性は呆気なく崩れ落ちてしまった。
――恐怖しか感じなかった紅い双眼に潜む、蠱惑的な情欲を知ってしまったから。
「うっ……んん……っ……く…」
甘い啜り泣きの声を上げながら涙目で青年を見つめる。
如何に涙を流そうとも、その両目は変わらず赤く。
どこかでは危険だと感じる自分がいる。
これ以上手を出せば、きっと自分は――。
だが、人間の本能は一度目覚めてしまえば簡単に御するものでは無い。
例えどうなろうとも、この行為自体を止める気は無かった。
政宗の身体を抱き寄せてその細い腰を抱えて強く突き上げる。
「……っあぁ!!はっ…はぁ……ぁ…」
――綺麗だ。
茶色がかった短髪を振り乱し、象牙の様に白い肌が朱に染まることで見事な輝度の差を生み出している。
一瞬浮かんだその考えを振りほどくように、青年は無我夢中で腰を進めた。
「……はっ……う…ぅあ…!!」
「……!いっ…!」
――絶頂が近い
逸るように何度も腰を揺さぶる青年には、恐らく『それ』が見えなかったのだろう。
「はぁっ…!ん……っ……――――あ、ぁああ!!!」
――政宗の口元に描かれた嘲笑と、―――背中に回された腕から伸びる、竜の爪が―――
『善い思いをさせてくれた礼だ。―――一番の快楽を得たこの状態のまま、永劫の闇に沈めてやろう。【私の器】を抱けたことを光栄に思うのだな。』
その言葉の意味を理解すること無く、青年の身体は、地に沈んだ。
背中に―――六爪で傷つけられた、竜の爪痕を残して。
『貴様如きの魂と精液のみでは、大した力にもならないが……まぁ良い。
この身体は素晴らしい。力を極めし者は快楽に弱いというが………この身体は男を惹きつける。我が魂の糧とするには…丁度良い』
白の着流し姿が闇夜に浮かぶ。
そこには、得体の知れない笑みを浮かべた、…政宗の姿と一つの屍体があるだけだった……。
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