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ワイングラス
砕け散る
血塗られた 狂気が
部屋に満ちてゆく
貴方を信じた
貴方を愛した
貴方が望む物を与え
貴方が悪む者を排除
して
貴方は まだ 足りないと僕の耳許で囁く
月はそれを黙って観ていた
蒼白い光だけをあたりに注ぎながら
貴方は 僕の総てを手に入れた
貴方は 欲しいものを僕から受け取った
それでも まだだと
耳許で囁く
ワイングラス
貴方が僕にくれた
ワイングラス
貴方からの贈り物
貴方の躯から流れ落ちる甘美な赤い雫
貴方の胸許に光る刃
僕の手首を滑り落ちる紅
僕の瞳を濡らす涙
貴方の艶やかな微笑み
今、グラスでひとつに混ざり合う
貴方の血と僕の血が
貴方の憂いと僕の歓喜が
ワイングラス
砕け散る
二人分の想いと共に
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