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一人で焦っていると、深みがあり、全身が震える程に威厳のある声が俺の耳朶を叩く。
一気に現実へ引き戻された俺は、とりあえず言葉を返す。
一周回って冷静だった自分を褒めたいな。
「すまん………なんとなく進んでたら此処について………帰り道が解らん」
『ほぉ………なんとなく、とな?しかも帰り道が解らぬと………お前は馬鹿なのか?』
「………否定できないな」
実際は馬鹿という程頭は悪くない。だが、目印も付けずに洞窟を突き進むなど、馬鹿のする事だからな………。
『人間と会話するのは久方ぶりだが、懐かしいものよな………クククク』
「何が可笑しいんだ?」
まさか、餌が自らやってきた事にか?もしそうなら、抵抗するぞ。
『いやなに………我の長きにわたる生が終わり、死を迎えようという今この瞬間。その場に人間が居ることが愉快なのよ!!クハハハハハハ!!ッ、カッ……ゴフッ!!』
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