信愛

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ひばりは、そんな結月を哀れむように見つめている。 しかし気丈に振る舞おうと強気な顔をする。 「それからな結月…神崎さんは元々 結月とのこの旅の取材を終えたら 引退しようとしていたそうだ。」 「え…引退?」 「あぁ。どうやら体力の限界を 感じていたらしく…昔のように がむしゃらに、ただ写真を!とは 撮れなくなっていたと…。」 結月は少し驚いて居る。 「恐怖心が出てくる様になっていたらしい。 体力の自信がなくなると恐怖心が湧くと そうおっしゃっていたよ。 今までの様に危険な場所でも ただ写真を!というそういう 気持ちにはならなくなったと…。 だが姪の茜さんには格好がつかなくて 言えなかったらしいな…。 それからおまえにも。 カメラマンとしてこれから歩み出す 結月に…ましてや自分がカメラマンの 世界に引き入れたのにって…中々 言い出せずに居たらしい。 だからこの事故を理由に引退する 形にしてしまったと。 だから結月が責任を感じる事は 何にもないんだとそう必死で 訴えてくれたんだぞ。」 結月は少しホッとした顔になり静かに涙を流す。 ひばりは、さっと涙を拭い結月を見る。 そして優しく微笑んだ。 「結月…」 結月は、ひばりを見る。 「リコの元へ帰りなさい。」 ひばりがそう言うと結月は泣きそうな顔になる。 「二人ともよく耐えたな。 しかし私は信じていたよ。 二人の絆をな。」 ひばりがそう言うと結月は笑う。
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