誇り

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会議室には千春と結月が残っている。 「なぁ千春…この仕事、結構 頑張ってとって来たんじゃねーの? 実際のとこさ。」 結月がそう聞くと千春は書類を見ていた手を止め結月を見る。 廊下では忘れ物をしたリコが駆けて来て居てドアノブに触れるが二人の話し声を聞き止まる。 「どうして?」 千春がそう聞くと結月は続けた。 「創立30周年世界のレーヴだぜ! 日本とコラボなら、きっと日本でも もっと売れてるベテランな アーティストを…って話も あったんじゃないかってさ。 まだ売り出したばかりの無名のやつを 使いたがらないだろ普通さ。 俺だって芸能活動休止中のモデルだ。 すんなり起用されたなんて思えねーよ。」 結月がそう笑うと千春も笑う。 「流石ね。バレたか…。」 「バレバレだね。」 そう言って結月は笑う。 「sunsetの曲、レーヴ本社に直接送ったわ。 それからあなたのプロフィールも。 あなたの撮った写真とかも。 そうしたらレーヴ社長自ら連絡頂いたのよ。 凄いのよ。あなたたち。 私なんかの力なんてなくても 認められる才能を持ってるのよ。 宇佐美結月もsunsetもね。」 千春がそう話すのをリコもドアの影から微笑みながら聞いている。 「いや、それは違うな。」 「……?」 「千春の情熱で俺らは生かされてるから 俺らは俺らだけ居ても何の価値も 見出せないぜ?」 結月がそう笑って言うと千春は少し涙ぐむ。 「な、な~に言ってんのよ! またカッコつけて…。」 千春はそう笑って涙を堪えた。 「あんた達を輝かせる。 それが私の仕事だからね。 プライド持ってやってんのよ。」 千春はそう言って書類を片付け始める。 「かっけ~よ、姉さん。」 結月がそう言うと千春は結月の腕を丸めた書類で叩く。 「ほら手伝え。あ、てか見て。 リコちゃんのやつまた忘れてる。」 「あ…ホントだ。」 二人はリコの手帳を見つけ笑い出す。 リコはドアの影から苦笑いしながら入って行く。 「忘れ物しちゃった~」 千春と結月はドアを見る。 「こらリコ!商売道具忘れちゃいかんだろ!」 千春がそう言うとリコは舌を出す。 結月は笑って二人を見ている。 誇り… きっと千春さんにとって結月やsunsetの二人が誇りの様に結月やsunsetの二人にとって千春さんもまた誇りなんだろう…。 私も誰かの誇りになれるような、そんな人になりたいとそう改めて思った。
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