守りたいもの

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「リコ!」 ナツにそう大きく呼ばれリコは背筋を伸ばす。 「は、はい!」 ナツはリコをじっと見つめる。 「いいかい?その体はもう一人の体じゃない。 お腹の子が無事に産まれてくるまで しっかりおまえが守っていくんだ。 その手伝いしか私らはできないよ。 産まれてからもそうだ。この子をずっと 守って行く母親としての覚悟はあるかい?」 皆は真剣にナツの話に耳を傾けている。 「それを聞くのも…今の若い子たちの中には まだまだ自分自分なとこがあって… 妊婦としての自覚が持てないまま お腹の子ばかりがどんどん成長して そういう大人になりきれない甘さが 赤ん坊を傷付ける事がある。 赤ん坊だけじゃない。自分自身の体も 時には命すら危険に晒すことだってある。 だから私はここに来るお母さん達にはまず 最初に覚悟を問うんだ。リコ…母親として この子を守って行く覚悟はあるかい?」 母親として… 守る… 覚悟… リコは真剣な顔をし俯く。 そして口を開く。 「あの…私は…まだ母親になるって正直 ちゃんと解って居ないかもしれないです。 だけど…これだけは今、はっきり 解ってることがあります。 私…まだこの子に会ったことも 話をしたこともないのに… なんだかこの子が大好きで愛しくて この子に会えるためなら何だってできる! そんな気がしてます。うまく言えないけど すごく会いたくて…私…この子のこともう すでに大好きで!って…そんなの 覚悟とかじゃないですよね? あはは…すみません……」 リコがそう言うとナツも優子も笑っている。 結月は何だか泣きそうだ。 「リコ…そういう感情がやがて 覚悟となる。おまえはもう母としての 母性が目覚めている。安心したよ。 だが!!妊娠出産とは病気じゃないが 予測できない色んなことがある。 そういうことにも、めげずに 一緒に頑張る。いいな?」 「は、はい!」 「結月、おまえもだ!」 「あ、はい!」 優子は笑う。
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