7105人が本棚に入れています
本棚に追加
/387ページ
「弄られ続けてたまるかってんだ。」
リコはそう言って結月の背中を押し足早に追い越した。
「あ、走るな!おい!」
結月はお腹の子を心配する様にリコへと急ぐ。
この日はひばりが焼かれて空へ旅立った日と同じような青空が広がっていた。
空からひばりが二人を祝福し見守っているかの様に…。
リコと結月は、ひばりのお墓に着き駐車場から歩き出そうとすると何処かからか声がして来る。
「リコさーん!こっちこっち!」
リコと結月は隣の寺の入り口から歩きながら手を振る穂とその隣で眠たそうに欠伸をしながら歩く響の姿を見つける。
結月は笑顔になり二人に手を振る。
リコと結月も笑いながら二人へと歩き始める。
「リコさん、結月さん。」
「お、二人揃って初詣か?」
「はい、あ…あけおめです!
って…喪中でしたね…すみません。」
「まぁ気にすんなって…。
俺らも今日籍入れちゃったしな。
今年もよろしくな。」
「お!ついに、おめでとうございます!」
「サンキュー。年末はバタバタして
報告みたいな挨拶だけになっちゃったから
近いうちみんなで呑もうな。」
「はい、ぜひ!」
穂は嬉しそうに返事をする。
響はどこか拗ねたようにそっぽを向いている。
リコは気まづそうに響を見ている。
響くん、まだ怒ってるのかな?
年末、二人がラジオの仕事の合間に妊娠と仕事を辞める事だけを告げたきり、ゆっくり話もできなかった…。
あの時も驚いた後、何も言わず休憩室を出て行っちゃったし。
それっきり電話にも出てくれてない。
結月はリコと響の様子を見て何かを察したのか急にハッとしたような仕草をする。
「あ!やべぇ…車のキーなくしたかも。」
「へ?さっき降りた後いつもみたいに
ポケットにしまってたでしょ?」
「いや、ないんだ、落としたかな…
悪いけど、リコ歩かせる訳に行かないし
穂くん一緒に駐車場捜してもらえないかな?」
「全然おやすい御用です。リコさん
大事にされてんね。もーうヒューヒュー!」
穂はリコを茶化し笑う。
「悪いが響くんはリコと待っててやって?」
「え…」
響は少し動揺する。
「ちょっとユヅ…私なら…」
「お腹冷やすとよくないらしいから
あったかくして待ってろ。じゃ、頼むな!」
そう言って結月と穂は走って行く。
最初のコメントを投稿しよう!