龍之介の秘密

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龍之介は眠そうに自分の店へと戻って来る。 そして店の前には一人の若い女…亜衣の姿がある。 「ごめん…また急に…。」 龍之介は笑う。 「亜衣…今日はどうした?ん?」 龍之介はそう優しく亜衣に言う。 「うん…」 亜衣は下を俯く。 「飯食ったか?」 亜衣は首を振る。 「よし、じゃぁ店でなんか作ってやる。」 龍之介はそう言い店の鍵を開け出す。 店の中に入り龍之介はライトを付けた。 「そのへん座ってろ。」 龍之介がそう言うと亜衣は頷きソファーに座った。 亜衣は店内を見回している。 龍之介はシャツを捲り出す。 「なんかあったかなぁ…」 そう言って厨房へと歩き出すと亜衣は口を開く。 「ねぇ…お兄ちゃん…」 龍之介は振り返る。 「ん?」 「この店ホントにやりたくてやってるの?」 「どーした?急に…」 「いつまでパパの言いなりになってるの?」 亜衣がそう聞くと龍之介は顔を強張らす。 「亜衣…お兄ちゃん見てると なんか辛くなる…。」 「なんだよそれ…」 龍之介はそう言って笑う。 「ねぇどうして…?」 「どうして…って…俺は一応、 橘家の長男だぞ?親の仕事 継ぐのが当たり前なんだよ。」 「けど… 前はちゃんとパパに 意見したりしてたじゃん。」 「俺ももう今年25だぞ?それだけ 大人になったってことだろ。 それよりちゃんと高校行ってんのか?」 「行ってるよ。」 「もう後一年だ。ちゃんと卒業しろよ?」 龍之介はそう言って笑い厨房へと入って行く。 亜衣は一人残り何か言いたそうな顔をする。 龍之介は厨房の冷蔵庫を開けながら思い詰めた顔になる。
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