2/19
前へ
/387ページ
次へ
そして…龍之介は無言のまま運転席に乗る。 亜衣はそんな龍之介の様子を気にし無言のまま後部座席に乗った。 「お兄ちゃん…」 「ん?」 「どうして…あんな風に翼さん達を 引き離したの?お兄ちゃんにとって 大事な人達なんでしょ?あの人達なら 私達の事、何も言ったりしないよ。 そんな事お兄ちゃんが一番解ってるでしょ?」 亜衣がそう言うと龍之介は少しの沈黙の後、口を開いた。 「おまえは何も気にしなくていい。」 「どうして?気になるよ!私のせいで お兄ちゃんがあの人達と縁を切ったりしたら 私もうお兄ちゃんと会ったりできないよ!」 「いいから!」 龍之介は少し声を荒げる。 亜衣は驚き黙り込む。 すると龍之介はまた静かに話しだす。 「いいから…おまえは何も言うな。」 亜衣は龍之介の頑ななこの態度を不信に思いながらも言葉を飲み込んだ。 そして龍之介は車を発進させた。 龍之介は哀しそうな目をしながら運転している。 そして…屋敷ではリビングで翼がやけになった様に酒を飲み始めている。 そんな翼を千春はやれやれとした様子で見つめている。 リビングのドアの前でリコと結月は話している。 「今夜、翼泊めるな。」 「うん!一人にしない方がいいよね。」 リコは頷く。 「龍之介の様子おかしかったから… もしかすると妹の事を知られたからっていう そんな単純な話じゃないのかもしれない。」 結月がそう言うとリコも考え込む。 すると結月は優しく笑いリコの頭の上に手を置く。 「おまえは一人の体じゃないから あんま考え込むなよ。わかったか?」 結月がそう言うとリコは頷く。 「うん…ただ私も心配で…。 あんな龍之介さん初めて見たから…」 「だよな。俺もだ。」 二人は黙り込む。 そして結月はリコを見る。 「とりあえず、今日はたくさん 歩いただろうし体休めろ。 風呂でも入ってゆっくりしろ。な?」 「うん。」 「翼は俺が付き合うから。」 結月はそう言って笑う。 リコは頷く。 きっと何か理由がある。 龍之介さんは何を一人抱えているんだろう…?
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7110人が本棚に入れています
本棚に追加