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「翼くん…」 佳織がそう言うと翼とリコは佳織を見る。 「龍之介のこと気にかけてわざわざ 私のとこなんかに会いに来てくれて ありがとね。それから…あなたも。 なのに、こんな事に巻き込んじゃって 本当にごめんなさい。」 そう言って二人に頭を下げる。 リコは首を振る。 「あいつらは、最近来だした客でさ… なんだか羽振りが良くってお金を 工面してもらったりもしててね…。 仕事は女子高生や大学生のスカウト業務を してるって聞いてた。けど正当な 会社じゃないんだろうなってのは 薄々は感じてた…それで…」 佳織はそう言って少し咳込む。 「大丈夫ですか?」 リコがそう言うと佳織は頷き、また話始めた。 「それで昨日、龍之介の妹があのビルに 入って行ったのを偶然見かけたの。 けど…私は龍之介には知らせなかった。」 「ぇ…どうして?」 翼がそう聞くと佳織は悔やむ様な顔でまた口を開く。 「世間知らずなお嬢さんに怖い世界も あるって事をその身で知ってもらおって そんな意地汚い感情が出ちゃってさ…。 酷いよね、そうやって知らんぷりしたのさ。 けど…まさか!まさかクスリとかそういう ヤバイ事をしてるとは思いもしなかった…! それで昨夜…龍之介があまりにも言うから あいつら問い質したら…そういうヤバイ事 奴等がしてるって事が解って…けど… 金の事で負い目もあったから仕方なく 黙ってる事にした。すぐに返せる金なんか ないしね…。けど…あいつらそれだけじゃ 心配だったのか同じ様に私の事も クスリ漬けにしようとやって来たのさ。 みんなあいつらの事知った者は容赦なく クスリ漬けにして口止めさてる。 きっとね……。」 リコと翼は顔がこわばる。 「だから早いとこ逃げた方がいい。 今はあいつら一人になったし 今しかない!あんたが翼くんの縄を 解くんだよ。ほら!早く!」 佳織がそう言うとリコは慌て出す。 「あんな使いっ走り翼くん一人で やっつけられるでしょ?ほら早く!」 「え、そんな、無茶な…龍ママ! 僕ちんみんなの中でケンカ一番 弱いんだけど…」 翼がそんな事を言ってる間にリコは翼の縄を解いた。 「あ…外れちゃった…」 翼はそう自由になった手を見つめ呟く。
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