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救急車の中でリコは酸素マスクをされている。 結月はリコの手を握り締めている。 「妊娠7ヶ月に入ったばかりの 妊婦です…はい…」 救急隊の緊迫した声が車内に響いている。 リコが何か言いたそうにしている。 「ん?なんだ?」 結月はリコの口元に耳を寄せた。 「ご…ごめんね…ユヅ……」 リコがそう言うと結月は言う。 「ホントだ。言う事聞けよ。 けど…ありがとな。龍之介のために。 俺らの仲間のために…。 元気になったらクレープまた食いに 連れてってやる!な?」 結月はそう言って笑う。 リコも微笑む。 そして…話さなくなる。 「リコ!おい…リコ!」 結月はより力を入れリコの手を握る。 「ばかもんがー!!」 翌朝…病室からナツの怒鳴る声が響く。 ベッドの中で体を起こし座っているリコとその隣で直立している結月は叱られた生徒の様にしゅんとして俯いている。 「まぁまぁ母さん!そんな怒らないの。 幸い切迫早産にもならなくてもう リコちゃんも赤ちゃんも心配ないんだから。」 優子はそう言ってナツを宥めている。 「リコ!身重な体で何やってんだ!全く!」 「すみません!」 リコはそう言って目を閉じ頭を下げる。 「私に謝っても仕方ないんだよ!全く…」 ナツはそう言って興奮している。 「ナツ…リコは悪くない。 俺のダチの事で俺がすぐ 行けなかったから…」 「ううん!ユヅは悪くないよ。 私がちゃんとユヅの言う事 聞かずに突っ走ったから…」 「けど…俺がもっと…」 そう庇い合う二人を見てナツは少し笑うが また怒った顔をする。 「いいか!もう二度とストレスが かかる様な事するんじゃないよ? いいねー?」 「はい!」 「はい!」 リコと結月は声を揃えて返事をする。 優子は笑っている。 「じゃぁ明日、産院で待ってるから。 念の為ゆっくりうちで寝泊まりしな。 結月も仕事で家を開けるしその方が 安心だろ?病院と違って家に 居るみたいな感じでリコも リラックスできるだろうから。な?」 「はい、ありがとうございます。」 リコがそう言うとナツは頷く。 「じゃぁまたな。」 「リコちゃん明日待ってるね。」 ナツと優子はそう言って病室を出て行く。
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