1章 おかしな預かり物

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「へ、へーおかしいなちゃんときいてたんだけどな」 「スゴい棒読みだなおい」 「か、帰ろ帰ろ」  雅樹は目を游がせながら、教室の出口へ向かいフラフラと歩き始める。 「あ、そうだごめん雅樹、1時間目の終わりに物理の加山に放課後実験室来るように呼ばれて、行かなきゃなんねえから、今日は先に帰っててくんね?」 「お前が呼び出しくらうなんて、珍しいな。で、何したんだ!?」  雅樹が妙に目を輝かせている。光太が呼び出されるのが、よっぽど楽しいのだろうか? 「別に何もしてないよ。俺は信頼されてるんだよ、お前と違って」  光太がふざけた口調で言うと、雅樹は、はいはい、と適当に流し、じゃあまた明日! と帰って行った。  光太はため息を付き、スクールバックを持ち、立ち上がった。 (あの加山先生が俺に何の用だよ? まさか本当に説教だったりしねえよな……)  光太は憂鬱になりながらも、教室を出て、中央校舎2階の実験室に向かった。  歳山高校は、5つの校舎からなっている。公立高校なので、綺麗では無いが、1校舎7階建て、そして中央校舎のみだがエレベーター完備など、設備はとても良い。  今光太がいるのは、西高等部校舎の4階なので、実験室に行くまでに多少の体力を消費しなければならない。校舎を大きくするのはいいが、移動をもう少し便利にしてほしい物だ。  やっと中央校舎の入り口までたどり着いたところで、前から泉実が歩いて来た。 「よお、泉実、こんなところで何してんだ?」 「あ、光太じゃん、またまたこんなところで合うなんて、思わなかったよ」  泉実は、中等部2年なのでめったに校舎内で合う事は無い。中等部でも、理数系なら交流もあるのだが、理数系、文系、体育系はそれぞれに交流を生みたがらないので、普通に生活していれば、合う事はまず無いだろう。 「因みに中央校舎には、数学のレポートを出しにきたんだ」  『長所をとことんのばす』と言う教育方針を持っているとは言え、それ以外は全くやらない、と言う訳では無い。メインの教科ほどでは無いが、それ以外の教科も勉強する。  泉実がだしたレポートもその宿題だろう。とは言え、あのレポートをやったのは、実質光太のようなものだが。 「光太は何の為に?」
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