1章 おかしな預かり物

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「俺は先生に呼ばれてな」 「へ~、先生に呼び出しくらったんだ~、何かやらかしちゃった感じ?」 (なぜ俺が呼び出されるとそう思んだよ?) 「何もやってねぇよ。だから俺は頼りにされてんだって」 「ふーん、じゃあ待ってるから、一緒に帰ろ?」 「別にいいけど、どんぐらいで終るかわかんないぞ」 「じゃあ、敬を捕まえて図書室にいるよ」 「ああ、わかった。なるべく早く行く」  光太がそう言うと、泉実は、また後でー、と言い、歩いて行った。  そして光太は再び実験室に向かい、歩き始める。  ここから実験室までは、階段を上ればすぐ行ける距離なので、なんで呼ばれたのかを再び考える時間すら無かった。  実験室。そう書かれた教室のドアの前に立つ。  この教室だけは、他の教室と違い、妙に綺麗に作られている。  ドアはボタンを押せば自動で開く作りになっていて、汚れ1つ付いていない。  光太がドアをノックし、ドアを開く為のボタンを押す。 「失礼します。加山先生、いますか?」  光太は実験室に毎日のように来ているのだが、来るたびにその設備に驚かされる。  何億分の1ミリを見る巨大な顕微鏡、太陽光を使用した、どんな物でも溶かす巨大レンズなど、本来高校にあってはおかしい物が多々置いてある。  この学校は、『長所をとことんのばす』為に、理数系には設備の整った実験室を、文系には、1人でじっくり考えられる巨大な庭を、体育系には、グランド、体育館、テニスコート、プールなど様々な施設が用意されている。  その、普通の学校では考えられない実験室の中心で何かを考えるように座っているのが、物理の加山先生。  年の頃は、40第後半、少し長めでしおれた黒髪に怪しさを表した代表のような目をして、『怪しい人』の代表のような男。  「来たか。こっちへ」  加山先生は素っ気なくそれだけ言うと、実験室に入ってすぐのところにある、実験準備室の中へ入って行った。  光太も言われた通り、続いて中に入っていく。  その中は、光太は初めて入るのだが、あまりにも普通の部屋だったので、特に何も言う事は無かった。何かリアクションをとってくれ、と言われたら、何この実験室本体とのギャップは? くらいか。 「用事とは何ですか?」
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