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普段教師とはほとんど会話しない光太は、滅多に使わない敬語を使い、聞く。
「今日呼んだのは、君に預かってほしい物があったからだ」
「預かってほしい物?」
「これだ」
加山先生はそう言いながら、少々大きめの机に乗った、『みかん』と書かれた80センチ×60センチ×30センチくらいの箱に触れながら言った。
「みかん……ですか?」
その光太の言葉をどう受け取ったのか、加山先生は苦笑し、話を続けた。
「いや、勿論みかんなど預けはしないが、ただ大切な物なのでな」
「なぜ預ける必要が?」
「明日から出張でな、こんな大きな荷物を持っていくのも邪魔だし、置いていく訳にもいかない、そこで成績優秀な君に預ける事にしたわけだ」
なぜ僕なんですか? と聞こうとしたが、それよりも聞きたい事があったので、そっちを質問する。
「中身は……何ですか?」
するとしばしの沈黙の後、加山先生が口を開く。
「それについてだが、できれば中は見ないで貰いたい」
光太はそれは何故か、と言う事も聞きたかったが、これ以上色々聞くのも良くないだろうと思い、わかりました。と答えた。
「すまないな」
とりあえず光太はその箱を持ち、ゆっくりと実験室を出た。
その箱は、予想以上の重みがあった。
歩くので精一杯になるほどのみかん箱を引きずり、幸い1つ上の階の図書室に、幸いにもついているエレベーターに乗り、向かう。
(敬と泉実がいて良かったぁ~、あいつらの手伝いが無かったら絶対俺の部屋まで持ってけねぇな)
エレベーターのおかげで、あっという間に図書室。移動距離はわずか数十メートル。
もしかしたら、これ、50キロあるんじゃね?と言う程重い箱を持ち、フラフラになりながらも中に入る。
滅多に小説など読まない光太は図書室に来るのは初めてだが、神秘的な程にまで大量の本に本来なら驚いていただろうが、今はそんな事に気をそらせば持っている謎の預かり物を落としてしまいそうだったので、気にしないようにする。
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