1章 おかしな預かり物

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 そこで部屋に入った光太に気付いた敬と、泉実が、えっ!と目を細めているのがわかる。  敬たちが座ってる席に着く前に、光太は謎のみかん箱を地面に置き、その場に座り込んだ。 (はー!もう無理!手が外れる!)  息を荒くして床に座り込んでいる光太に、敬たちが近寄り、声をかけた。 「はは、これは何の罰なんだろ」  敬は笑顔で言った。 「やっぱり光太何かやったんじゃん」  泉実は、ほら見ろ、と言わんばかりの表情でこちらを見ている。 「だから俺は何もやってないって!これを預かったのは信頼されてるからでだなぁ……。とにかく帰ろう!」  そう言うと、2人はうなずき、何も言わずに謎のみかん箱を持ち上げる。それに続き、光太も持つ。 「はは、何が入ってるんだろう。この大きさでも流石に重すぎるような気がしなくも無いな」  敬は相変わらず笑顔で言った。 「うっ!重い!一体何が入ってんの?これ!?」  泉実は正直につらそうな顔をした。 「俺も知らねえんだ。何か中は見んなって」 「何それ?怪し!」 「はは、もうちょっと上に持ち上げてもらってもいい?」 「こんくらい?」 「おと、おい泉実、それは上げすぎだ!ちょ、危な!」 ☆  そんなこんなで、ようやく光太の部屋。  多少ちらかっている為、謎のみかん箱をおくと、8畳程の光太の部屋に足の踏み場がほとんど無くなる。  3人は、息を荒くして、わずかなスペースを見つけ、そこに座る。  とにかく2人が待っててくれて助かった。こんなものを1人でここまで持ってくるのは、不可能だっただろう。特に運動神経抜群の泉実がいたのは、幸いだった。 (持つべきものは幼なじみってな)  光太が落ち着いて息を整えていると、泉実が立ち上がり、汚い部屋の捜索を開始した。  「うわ!怖!なんで机の上にスタンガンなんておいてあんの!?」 (あ、やべ!昨日作ってそのままだった!)  光太は慌てて立ち上がり、それをまだ手に持っているスクールバックに詰め込む。 「い、いや、これはな、お前が触れていいものじゃねえんだ……」 「何?また子供扱い?」  泉実は、すねて、その場に座り込んだ。 (言えねー!悪人を捕まえる為に作ったなんて夢みたいな理由で作ったなんて言えねー!)
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