1章 おかしな預かり物

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 3人の目線の先にあるのは、大きな画面。 「……なんだこれ?」 「なんだろう?」 「はは、テレビ……かな?」  それは、みかん箱にぴったり収まった黒いブラウン管のような物だった。しかしテレビではない。なぜなら、大きな画面を囲っている枠には、様々な謎のボタンがついていて、テレビにしては、妙に細長い。  これが何だか余計気になった光太は、その画面を人差し指で、軽くつついてみた。 「あ、ずるい光太!触らないって自分で――」  そこで泉実の声が途切れた。  そう思った次の瞬間、光太は凄まじい光に視界を奪われた。数秒の間、何も見えなかった。その膨大な量の光を放ったのが、そのテレビのような物の画面と気付いた頃には、光太の回りは、光に包まれていた。 「っ!何だ!?何だよこれ!?」  そこで光太はこの光の世界に唯一残っている画面に映る文字を目にした。 『科学はオカルト。魔法が全て。そう信じろ』  この現実を全て否定するような文字を見た光太は、何か気味の悪い物を感じた。  「どこだ!?敬!泉実!」  しかし返事は返ってこない。 「こ…た、……た、だ…じょ…うぶ?」  その時、光太の耳に僅かだが声が聞こえてきた。  次の瞬間、視界が戻った。 「はっ!」 「ねえ、光太、大丈夫?」  泉実が肩を揺すってくる。  だがまだ状況を理解出来ていない光太の耳には入らない。  景色は、完全に紅葉しきった木々が良く見え、その木々の奥には、歳山高校が見える。  そして光太たちがいるのは、いつも通る寮舎への帰り道にあるベンチ。右から、敬、光太、泉実の順番で座っている。  手にはさっきから持っているスクールバックがある。 「あれ、ここは?俺たちはさっきまで俺の部屋にいたはずじゃ……」 「やっと、何か言った。どしたの、ボーとして?」 「いや、だから何で俺たちはこんなところにいんだよ!?」 「はは、何でって、ボケた?さっきまで魔法発動の為の展開術式における最も有効な手段について話していたんじゃないか」 (へ?コイツ今なんて?魔法?)  光太、敬、泉実の3人で勉強を教え合う事は多々あるが、こう言った『非科学的な話題』について話す事は光太が科学者を目指している性質上、まずない。
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