序章 平和な日常

2/6
前へ
/130ページ
次へ
「泉実は20メートル直進、次の角を左折。敬は50メートル先で待機」  まだ寝癖が残っているような跳び跳ねた髪の毛の15歳の少年、鳴川光太(ナルカワ コウタ)は手に持っている携帯電話の設定をスピーカーフォンにして、画面を確認しつつ、的確に指示をだした。 目線の先にある携帯電話の画面には、この辺りの地図と、4つの色の違う点が映しだされていた。  同時に2人と通話しているのは、そう出来るよう光太が3人の携帯電話に改造を施したからだ。 『りょーかい!』  電話ごしにそう答えたのは、幼なじみの泉実。 『了解した』  遅れてもう1人の幼なじみ、敬も返事を返す。  2人の返事を聞くと、光太もまだ3時過ぎなのにも関わらず妙に薄暗い路地裏へ、走り出す。 『光太! あいつを捕捉! 後方から接近ちゅう!』  泉実から連絡が入った。 『光太、こっちもあいつを見つけた。前方からこちらへ接近中』 「わかった、すぐ向かう」  光太はそう言うと、携帯電話の画面に移っている地図の3点が集まっている場所へ急ぐ。 『奴に気付かれた。捕獲にはい――』  そこで光太は携帯電話を閉じた。携帯電話無しで話せる距離になったからだ。  そこでは、身長2メートルはあるであろう、黒いニット帽を被った大男、少し長めの髪と、メガネをかけた、大男程ではないが、長身の16歳の少年、木原 敬(キハラ ケイ)そして、背は低めで、ふわっとした、薄い茶色のセミロングの髪の毛が特徴的な14歳の少女、菊野 泉実(キクノ イズミ)が睨みあっていた。  そこは街の路地裏にしては、比較的広い空間で、小さなアパートなら建てられそうな空間だった。空気は湿っていて、薄暗く、敬、泉実、大男の睨みあいがその怪しい空気をさらに強くしていた。  2人並んで大男を睨んでいる敬と泉実、それに対抗するように身を構える大男。光太は大男の後ろの道から出てきて、後ろから静かに大男を睨む。  いろんな意味で場違いなほど目立っている泉実なのだが、それに違和感を持つ者はいない。  それは泉実の手に持つ、警棒型のスタンガンからか。その警棒型のスタンガンは同型の物より長く、剣道の竹刀を連想させる変わった形状をしていり。  電圧は約50万ボルトと高いが、電流が数ミリアンペアしか無いので、死には到らないし、気絶もせず、少し動きを封じる為の作りはスタンガンと同じだ。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加