序章 平和な日常

5/6
前へ
/130ページ
次へ
 そして部屋から出て、階段を降りる。  光太の通う高校、国立歳山高等学校は、寮生活が義務ずけられており、それに従い、光太も学生寮で生活をしている。  歳山高校は、全国トップの偏差値を誇る国立高校で、特殊な教育方針を固めている。  その教育方針とは、『長所をとことんのばす』と言う物だ。一見聴こえはいいが、これにも様々な問題点がある。その最も大きな問題点とは、『長所をとことんのばす』と言う事は、逆に言えば『長所以外は捨てる』と言う事だ。  まだ開校10年程のこの学校は、まだこの問題点を解決出来ずにいるが、この学校は全ての分野において全国トップに出ているのだから、教育委員会なども下手に口は出せないらしい。  因みに、総生徒数は2475人。  多いが、中高一貫であるその性質上仕方がない事である。  そんなに生徒がいるのにも関わらず、寮に1人1部屋用意されているのは、常識はずれなのだろうが、あるものは仕方がない。  階段を降りると、そこには食堂がある。生徒数が多いだけに、流石に広い。  勿論1つの食堂に全校生徒が集まる訳は無く、学年ごと、さらに男女別に寮舎(と言うかもうマンションに近いのだが……)が別れていて、計12建の寮舎があり、それぞれに2ヶ所の食堂がついている。  とりあえず光太は空いている席を見つけ、腰をおろす。  テーブルには、ロールパン、スクランブルエッグ、スープと洋系の朝食が並べれていた。  朝と言う事もあり、友人と楽しく会話する生徒が少ない。  光太も静かに朝食を口する。  そこへ、少し長めの髪と、メガネをかけた、長身の16歳の少年、木原 敬が光太の隣に座った。 「おはよう、敬」  光太はロールパンをかじりながら適当に言った。 「あぁ、おはよう」  勿論、この木原敬と言う少年は、夢にも出てきた木原敬と同一人物だ。光太の幼なじみの1人。  だが朝は弱い光太と、特に何も話そうとしない敬は、さっさと朝食を平らげた後、無言で立ち上がり、食堂を後にした。  そのまま、会話もなく寮舎の出口の扉を開けた。  そこには、薄い茶色のセミロングの髪の毛が特徴的な14歳の少女、菊野 泉実が何かを待つように立っていた。  何かと言うのは、光太と敬の事だ。  菊野泉実も、夢に出てきた菊野泉実だ。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加