1章 おかしな預かり物

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 今朝見た夢は、珍しくリアルな夢だった。しかし絶対不可能な夢の世界と言う訳ではないのも事実である。  おそらくは犯罪者など、捕獲する対象がいれば可能だろう。  その理由は、光太は、理数系のトップ、敬は文系のトップ、泉実は体育系中等部トップで、1番得意なスポーツは、剣道であるからだ。  『長所をとことんのばす』と言う教育方針を持っている歳山高校で、理数系のトップ、文系のトップ、体育系のトップとは、すなわち全国でもトップクラスの頭を持っていると言える。  現に光太は、科学の天才で(それ以外は、まるでダメなのだが……)夢に出てきたスタンガンやバネ靴などは材料さえあれば作る事が出来る。  そして敬は、分析が得意で、ケンカ相手の僅かなしぐさや動きから、攻撃するときの癖や、性格がわかるらしい。  泉実は、勿論剣道の技術を生かした近接戦闘。  だが実際は、そんな街を歩いていて、犯罪の現場に遭遇する事が、皆無に等しいので、ほぼ不可能なのだが、多分光太は、夢のような事をしたがっているのだと、自分では思う。  仕事でも、相手を傷つけて楽しむ為でも無く、全く無関係の他人の為に無償で他人を助ける、そんなヒーローのような存在に、光太は憧れを持っている。  ――あの時、光太を助けた男のような、ヒーローに。  平和なのは良いことだが、その光太の知らないところでは、日々暴力の被害にあっている人が大勢いるだろう。  だが、光太はそれら全てを救おうとするような、ヒーロー人間ではない。憧れは、所詮憧れ。  そう半分諦めつつも、日々流れて行く平和な日常を楽しんで生きている。  そんな事を考えていると、チャイムの音がした。  その音で、光太が聞いているふりだけして、全く聞いていなかったホームルームは終了した。  光太は、ねみぃ、とあくびをしながら座っていると、おはよう! と朝っぱらから高いテンションで声をかけられた。  その声の主は、木村雅樹(キムラマサキ)。こん色のブレザーに赤青チェックのこの学校の制服をきた、髪は短め茶髪の少年だ。 「おはよう、雅樹、相変わらず朝っぱらからテンション高けぇな」  半ばあくびを交えながら、光太は返した。 「お前は相変わらず朝弱いねぇ」  雅樹は眠そうな素振りを一切見せずに呆れた調子で言った。 「ところで、光太! 数学の宿題やって来た!?」
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