1章 おかしな預かり物

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「またお前は宿題やって無いのか?」 「俺は多忙な毎日をおくってんだよ!」  雅樹はそんな事を満面の笑みを浮かべながら、言う。  それと同時に、雅樹の右手が光太に何かを求めるように開かれる。 「宿題貸せってか?全く、いい加減にやって来いよな」  光太は呆れながら昨日学校で終わらせて机にしまっておいた、数学のプリントをその、宿題貸せ、と言わんばかりの右手に渡す。 「……本当に今回だけだからな」 「勿論わかってるぜ!」 (コイツ、絶対わかって無いな……)  雅樹は受けとると、さっさと移す為に自分の机へ戻って行く。  勿論、雅樹は数学が出来ないのではない。理数系、文系、体育系でクラス分けされるこの学校の光太と同じ理数系クラスのB組にいる生徒が、数学の宿題ごとき――勿論一般のレベルからすると難問の集まりなのだが――を終わらせる事が出来ない訳が無いのである。  雅樹は、あの軽い態度からは想像出来はできないが、生まれながらの天才というやつで、ほぼ勉強はせず、光太と同じ『8つ星』と呼ばれるこの高校の理数系上位8位に入っている。  日々の努力でこの地位にいる光太とは、逆の性質、と言う事だ。  しかしこのような『生まれながらの天才』は、この学校では珍しい事では無い。それどころか、そっちのほうが大多数をしめている。  それには、文系の敬も当てはまる。  ただ雅樹はこの高校にいながら、勉強を普段しないので宿題と言うものも、しない。と言う事だ。写すのは数学が2時間目なので、雅樹なら間に合うだろう。  光太にも多少の妬みなどはあるが、それはどうこう言っても仕方がない事だ。  そこで授業開始のチャイムが鳴り響いた。  それとほぼ同時に1時間目、物理学の担任の加山先生が教室の扉を開き、入ってきた。  そこから授業が始まった。 ☆ 「ハァー、今日の授業も疲れたぁー!」  帰りのショートホームルームを終え、光太に向かってきた雅樹は、解放間全開で叫ぶに近い声量で言った。 「授業もろくに聞いていなかったのに、さぞお疲れの様で」 「い、いや、ちゃんと真面目に、集中して聞いていましたともさ!」 「へー、机の影で、ゲーム機をいじっているのが見えたんですがねぇ」  雅樹がギクッと固まる。
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