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「大丈夫かールカ。」
明るく言いながら近寄ってくる少年はアスカ=ライアス。笑いながら頭に残っていた煤を払ってやる。
「平気。またやっちゃった」
笑顔で返すルカにアスカの笑みも広がる。
そうしている内に授業の終了の合図が聞こえてきた。それを受けて生徒達は解散し、教室へと戻り始めた。
「ルカ」
話しかけられ、ルカが振り返ると、幼馴染みのナイト=キースが神妙な面持ちで立っていた。その表情の意味を悟ったルカは笑みを浮かべてナイトを人気のない隅へと連れていった。
「何て顔をしてるのよ。いつものことじゃない」
先程までとは違い少し大人びた口調になったルカナイトに話しかけてくる。
しかし、返ってくるのは深い溜め息。
「少しぐらい力を使えば良いのに」
愚痴のように呟くナイトにルカは肩をすくめて首を振った。
そしてまた聞こえてくる溜め息。
これは実習訓練がある度に訪れる日常だった。
力がなく落ちこぼれと称されるルカ=リスキー。
これは、偽りの姿であった。
本来の彼女の力は、とても強大なものである。しかし、強大すぎる力にコンプレックスを持つルカはその力を隠し、敢えて落ちこぼれとして生活しているのであった。
このことを知っているのは幼馴染みであるナイトとこの学園の理事長のみ。
ナイトと理事長は親子関係にあり、その縁でルカは学園に入学したのだ。
友人の誰も力の事実を知らないが、ルカはそれで充分だった。
力を使わなければ必然的に怪我を負うリスクも増える。
それがナイトの心配の種なのであった。
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