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休み時間になれば、転校生の席は人でいっぱいになった。
飛び交う質問にヨルキはひとつひとつ答えている。
「やっぱりすごい人気よねえ」
「目がハートよ、サーヤ」
惚れ惚れと見つめるサーヤにルカは苦笑してナイトに目を向ける。ナイトも肩をすくめ、呆れたような表情を見せる。
「退いた退いたー」
ふいにアスカが立ち上がり、群がる生徒達をはねのけた。文句を言う生徒を無視し、ヨルキの顔を見つめて笑った。
「俺、アスカ=ライアス!!よろしくな!」
「よろしく」
ヨルキも愛想のいい笑顔を浮かべて応じた。
その勢いにのり、サーヤやナイトも自己紹介をしていく。
「ほら、ルカも」
サーヤに背中を押され、ルカもヨルキと目を合わせた。
先程の感覚が甦り、どきりとするが、平静を装いながら名前を告げる。
「よろしく」
ヨルキが笑みを浮かべて言葉を告げた瞬間。
突然地面が大きく揺れた。
教室に悲鳴が沸き起こる。
「何これー!」
サーヤが声をあげる中、ルカは黙って揺れに耐えていた。それを隣で見ていたアスカはこっそり首を傾げた。
しばらくして地震がおさまり、生徒の一人が扉に駆け寄って手をかけると、いつものように開けようとした。
しかし、その扉は一向に動かない。
「開かない!!」
「何で!出れないの!?」
一気にパニックが起こる。この非常事態に冷静でいられる者はいなかった。一部を除いて。
「落ち着けっ」
びり、と通る声が響いた。それはナイトの声であった。
声に圧倒され、静かになると、ナイトは落ち着いて周囲を見渡した。
「落ち着くんだ。騒いでも何も始まらない。みんなで活路を見出だすんだ」
力があるのだから、と引き締めるように言ったナイトに生徒達は次第に落ち着きを取り戻していき、互いに話し始めた。
その時、クラスメートの一人が姿を消していることに気づくものはいなかった。
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