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京の町を月明かりに照されながら人影が二つ、ゆったりとした足取りで歩いていた。周りから見れば仲の良い兄弟に見えるであろう彼等は宿に帰る途中だった。 暫く歩いていると前から酔っている何人かの浪士達が歩いて来て、すれ違う際青年と肩が当たった。明らかに浪士達の不注意だったのだが「てめぇのせいで骨が折れた」だの「仲間に何しやがる」だの言いたい放題言い散らす浪士達。 それに対して短気な青年は、売り言葉に買い言葉、此方も言いたい放題に言っている。 「止めなよ」と言って止めようとする陽桜の声も青年には届いていない。 そのうち頭に血が昇りすぎた浪士の一人が刀を抜いて襲ってきた。それに続くように浪士達は刀を抜き始めた。 「めんどくさいなぁ」 ぽつりと呟いた陽桜は襲い掛かる刀をスルリと交わし溜め息を溢した。 二人は人目を避けるために人気の無い方へと走り出した。浪士達は二人に罵声を上げながら追いかけてくる。 暫く走ると青年が道を間違えたのか行き止まりになり浪士達に挟まれた。 「こんだけ走って行き止まりって…もしかして方向音痴?」 「うっ、うっせぇよ!」 二人が言い合っていると漸く追いついた浪士達が肩で息をしながらも勝ち誇ったように笑みを浮かべた。 完全に逃道が無くなった青年は刀を抜き、襲ってきた浪士達を切り捨てていき、陽桜は腕を組み軽々と避けていた。 京の町外れに静寂を裂くように刃のぶつかり合う甲高い音と斬られた浪士達の断末魔が響いた。 .
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