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その音は近くを巡察していた一番組と三番組に聞こえ、その音を不審に思ったそれぞれの組長の指示に従って音の聞こえる方へ急いだ。
そんな事を知る筈もない二人は血の海となった場所で言い争っていた。
「ほっとけば良かったのに、こんな弱い奴等の言う事なんて」
「あんなに貶されて平気な顔してられないんでね」
「はぁ~、阿呆らしい。逃げるだけ逃げて結局斬殺…。逃げる意味あったの?無計画にも程があると思うけど?」
「ぅ゙、うるさい!!」
――殺気っ!!?──
足音共に感じる殺気に言い争うのを止めて感じる殺気よりも鋭く冷たい殺気を纏い転がる屍の先を睨む二人。
そこに途中で合流した一番組と三番組が現れた。
彼等は目前に広がる光景に眉を寄せながらも、自分達に殺気を放つ二人に声を掛ける。
「此れをやったのは貴方達ですよね?」
「だからなんだよ。先に刀を抜いたのは其れだぜ?俺等は罪を問われる必要があんのか?」
「言いたいことは屯所で聞こう。怪しい素振りをすれば斬る。」
「……ホント…面倒だな。従う謂れは無いんだけど…」
「いいから黙って付いてきなよ」
そう言って沖田は少年の腕を掴もうと手を伸ばす。
が、その手は少年を掴む前に殺気立った青年に掴まれる。
「大人しく付いてってやる。だからこいつに触んな」
そう言って少年を隠すように立ちはだかり沖田を睨み付ける。
二人の間にバチバチと火花が散る中、斎藤の「早く行くぞ」という一言で二人の睨み合いは終わり、少年と青年は新撰組の隊士に囲まれながら歩き出した。
そうして二人は新撰組の屯所に連れてこられ、現在に至る──。
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