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「あれは正当防衛になるだろ?」
「あぁ、それはわかった」
説明を聞いた土方の答えに心なしか安堵したような顔をした青年だが、次の一言で再び表情を強張らせた。
「昨夜の出来事が正当防衛なのはわかった。だが、てめぇらは人斬りだろう?」
「……何故、そう思う?」
暫しの沈黙の後、殺気立つ青年の変わりに言葉を紡いだのはずっと黙ったままだった少女だった。
「何故、そう思う?」
黙った土方にもう一度問う少女。
「昨夜の人を斬った後のてめぇらの様子を聞いた。聞いた話じゃ人を初めて斬ったような態度じゃあねぇ。今もそうだ。こんだけの殺気に包まれながらもてめぇらの態度は飄々としてやがる。つまり殺気には慣れてるっつう事だ」
土方の言う通り、部屋には文字通り鬼の形相で睨む土方始め、全員が敵意を剥き出しにし、怪しい行動を取れば直ぐ様殺せるように気を張っていた。
常人ならば直ぐにでも失神するであろう殺気が部屋には渦巻いていた。
その殺気を物ともせずに平然としている二人は只者ではないことは一目瞭然だった。
一旦言葉を切った土方の次の言葉を待っているように二人は土方に視線を向ける。
「それにさっきお前がこの部屋に来たとき、そいつはお前を『白夜叉』と呼んだ。此れでてめぇらを人斬りと判断するのに十分だろ?」
ニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべる土方にバツの悪そうな顔をする青年と薄く冷笑を浮かべる少女。
「よくキレる頭だな…。そいつに見習わせたいくらい……」
「はっ、褒められるたぁ思っても無かったぜ。……だが、否定はしないんだな」
土方の推理を褒めた少女だが、自分達が人斬りと言われた事を否定するつもりはないのか、薄く冷笑を浮かべるだけだった。
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