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ハァ……ハァ……
月明かりだけが照らす道を必死に走る二つの影。
その後を刀を手にした男が数人追いかける。
「兄様……父様と母様は……?」
手を引かれながら走る少女は傍に居ない両親を探す。
「二人なら大丈夫…。大丈夫だから──…」
自分に言い聞かせているように呟く少年は少女の手を引き、いくつも町角を曲がりある蔵に隠れた。
外では自分たちを探す怒鳴り声が響く。
「兄様……兄様……父様は……?母様は……?――兄様は……?」
小さな身体を震わせながら少女は問い続ける。
「大丈夫……直ぐに迎えに来てくれるから……だから安心しな……」
本当は大丈夫でもないし迎えも来てはくれないだろう。それでも必死に呟く。
震えながら涙を溢す少女をきつく抱き締める。
この腕の中にある小さな小さな温もりが
消えてしまわないように…
離れてしまわないように…
ギュッと強く小さな温もりを抱き締めた──
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