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暫くぼーっとしていると不意に襖の向こうから此方に近づく足音が聞こえた。
「失礼するよ」
そう言われてから開いた襖の方に目をやると人当たりの良さそうな微笑みを浮かべた少し年配の男が立っていた。
「やあ、おはよう。気分はどうだい?」
「……誰?」
少しの間を空けて返ってきた声は小さくとも警戒の色を含んでいた。異人の様な色をした隻眼に殺意がちらつく。男は警戒を解くように優しく微笑み、自己紹介をした。
「私は井上源三郎。皆には源さんと呼ばれているよ。」
「……此処どこ?」
井上の態度に殺気は消えたが警戒の色は消えない。
「此処は新撰組の屯所だよ。少し私と来てもらえるかな。歳さん達が待ってるから。」
「歳さん……?」
「あぁ、土方歳三。此処の副長のことだよ。それから、その髪は解いた方がいいかな。ぐちゃぐちゃだよ。」
新撰組……?なんで人斬り集団の所に──
無表情の少女は井上に自分が居る場所を聞いても自分が其処にいる理由が分からず、とりあえず髪を解いて髪紐を緩く首に巻き、大人しく井上に付いていくことにした。
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