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「しかしなぁ。悪人には見えんがなぁ」
先程起こった怪奇現象を回想していた俺は、近藤さんの言葉に我に返る。
「何故、そう思える?」
「ん…………なんとなく…」
俺は溜め息をつく。
あの呆けた面の女とへらへらと阿呆のような男の何が解ったと言うのだこの男は。
何だか考えるのが億劫になってきた。
夢だったならどんなに楽か。
だが、ここで気を抜けばこの近藤という男はこのままあの二人を疑う事無くここに居座らせてしまいかねない。
「よし。取り敢えずこの荷、調べるか」
俺はやる気を取り戻し、提案した。
「そうだな。あ、いやしかし、ナズナ殿は触ると死ぬと言っていたぞ?」
「荷触って死ぬなんて事あるか。それに、そんなもんあったら益々怪しいだろ」
「…慎重に、な」
近藤さんの心配顔を軽く受け流し、箱の一つに手を伸ばした―――
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