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「訳のわからぬことを言うな!」
――俺は出来る限りの凄みを効かせ、目の前の者を威嚇した。
この女は何をほざいているのか。
いや、そもそも女なのだろうか。
見た事の無い着物を着ていて、その形状をなんと言えばよいか学びの無い俺には上手く表現出来そうもない。
一つ言えるのは、どう見ても異人の着物にしか見えないと言うことだ。
にも拘わらず、目も髪も黒い。漆黒。
そしてその髪は結わぬ洗いざらし。
長さも肩より少し長い位のもので、まるで小童のよう。
なのにどう見繕ってもこいつは大人だ。
肌の色は京の女のように白い。そして目、鼻、口、全ての部位が小さめで品よく収まっていて肌艶もその辺の女とは一味違う。
褒めているように聞こえるだろう。
だが、その誉め言葉を無かった事に出来る問題点。
女が胡座をかいているのだ。しかも頬杖をついて。
眠たそうな顔で。
やはり男だったか、と納得出来るならしたいものだが。
よくよく見ると、胸が膨らんでいるのだ。しかも立派に。
悪くない。
いや、まて。違う。そうじゃない。
今この女なんと言った?―――――
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