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少しの沈黙の後、女はさらに続けた。
「信じられないのは仕方がありません。ですがある程度理解して頂けなければ話になりません。この時代での常識がない事を考慮していただいた上で、せめてこの“彼"だけでもこちらに置いて戴きたい。いきなり過去へ来てしまっては行くとこがありません。彼は強い。足手纏いにはならないでしょう」
女はまるで、ここが何をする場所か知っているかのような口振りだ。
「え。僕だけ?」
“強い彼”は女に突っ込む。
そう。
女の横にはもう一人いた。
女曰く、先の世から来たという奴がもう一人。
こちらはどう見ても男だ。
決して目立たぬ訳ではなかった。
いやむしろ、女より酷い。
髪は赤茶けすぎており、一つに結う事も出来ないくらい短い。しかもうねうねと酷い癖毛。身の丈は細いが座っていても解るくらい大柄。
極めつけは青い目。
もう、これは異人。
エゲレスあたりだ。
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