居待月

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「山崎さん山崎さん。これで大丈夫ですか? 」 金城さんは乞喰に変装するための着物や顔を汚す煤などを風呂敷の上に置き、どこか愉しげにきいてくる。 「そうですね…、あ、手拭いも持っておいたほうが」 「はあ~い」 「しっ、大きな声を出してはいけません」 「はーい」 金城さんの存在を何人たりとも知られてはいけない。 だからさっさと屯所から出てしまって、ナズナさん達の尾行の後は寝泊まりもここではなく、私が使っている別宅へ移動する。 「では、昼までここで静かにしていて下さい。万が一何方か来られたら、押し入れにでも隠れてく『山崎さん』――  突然、部屋の外から声をかけられた。  金城さんは機敏なもので、弾かれるように今言った押し入れの中に隠れてしまった。  この部屋は奥まったところにあり、私の部屋だと知っているのは近藤派の幹部だけだ。 よって訪問者はその中の誰かだろう。
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