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「で、彼はここに置いて頂けるのでしょうか」
その問いは俺ではなく、俺の隣で未だ固まっている男に向けられていた。
彼の名は“近藤勇”(コンドウイサミ)。
近藤さんはここ、壬生浪士組の局長。
そして俺の幼馴染みでもある。
「う、あ……で、ではまず……名と、国はどこか教えて頂こうか」
なんとか対応に成功した近藤さんは、組んでいた腕を解き目の前の二人に問う。
それに対して女が
「確かに。私としたことが。申し訳ありません。」
何が私としたことが、だ。
お前の他人となりなんざ知らん。
いや、そんな事はいい。
俺が今すべきは、珍妙なこいつらを見極めどう対処するか。
冷静にならなければ。
近藤さんは甘い。
四角い顔で難しげな面だから判りにくいがこの男の心中にはいつ斬り棄ててやろうとか、どんな拷問で暴いてやろうとか、そういう考えがまず無い。
いつもそういう案を出すのは俺の役。
それが嫌なのではない。
それで良いのだ。
近藤さんの様な人だから皆がついてくるのだ。
だから今回も俺が。
―――壬生浪士組 副長 土方歳三(ヒジカタトシゾウ)が―――
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