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「…………」
情けなさと羞恥で土方の顔は真っ赤だ。
「…………ぶっ」
「……笑わないで下さい」
「す、すみま………ぶはっ」
永倉は壺にはまってしまったらしい。
「っ永倉さん!」
永倉はけらけらと笑いながらも、内心驚いていた。
無口で、いつも薄ら笑いを浮かべて、皆で酒を交わしていても隅の方で一人黙っている男。
何を考えているか分からないのだ。
後の土方曰く、
「薄ら笑いじゃねえっ愛想笑いだ!」
らしいが、
そんな土方を永倉は、
(どうも合わん)
と、感じていたのだ。
こういう男は、少し斬られようが平然としているような奴と思っていたのだ。
だがどうだろう。
今の土方が、永倉には“人間らしく”見えたのだ。
「ひ…じかた、ふふっ…さん。一応、血止め…ははっしておきましょう。…くっ」
笑いを抑える努力をしながら土方を気遣う永倉。
「…………ぶっ…」
遂に、自分の事だが土方も笑ってしまった。
もうその後は、二人草の上で笑い転げた。
ひいひい言いながら、“逃げろー!”だ“くそー!”だ叫びながら、もう何がなんだか本人達にも分からない。
その後二人は肩を組み、少年のようにはしゃぎながら、遊び場へと繰り出して行ったのだという。
「新さん」
「歳さん」
こう呼び合い、試衛館の仲間達を驚かせのは、こんな事があってすぐの事だった――――
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