955人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は女です。何とでもなります」
何がどうなるのだろう。
伊東は尚も続ける。
「しかし竜也は腕はたっても要領が悪い。放っておけば女の尻を追い掛けながら野垂れ死ぬのが落ちです。ですからお願いしてるのです煙草吸ってもいいですか」
それはお願いしてるのか。
あと金谷は酷い言われようだかそれでいいのか。
“どうぞ”と、俺の心中とはどうも同じではないらしい近藤さんは一服をさらりと快諾する。
伊東はすすと煙管とは違う煙草と、恐らく持ち運べる灰盆を腰の辺りから取り出し火を難なく着けさっさと煙を吐き始めた。
先の世の女は皆このような振舞いなのだろうか。
もしそうだったら、ろくなもんじゃない。奥ゆかしさもへったくれも無い、この女だけがおかしいのだ。
俺はそう結論づけた。
「何とかなる、とは……春を売るとでも?」
近藤さんはこんな女如きに心配そうに問う。
春を売る。つまり女を、身体を売るのかと。
.
最初のコメントを投稿しよう!